organ

bubunのコレクションの系譜にsolo,net,tick,formに続き[organ]が加わる。構想そのものは最初のコレクションを発表した時からあったものの、当初は技術的な蓄積が不足していてなかなか具現化できなかった。それでも他のシリーズの制作を重ねていくうちに少しずつ応用できそうなヒントが得られ、ようやく8月ころから形にすることができはじめた。

写真のペアのピアスは一見するとそれぞれがひと塊のガラス片に見えるかもしれないが、実際には何十もの小さな円形のガラス片が独立して存在していて、それらが寄り集まりジュエリーとしての形体を生んでいる。小さな丸いガラス片は、その一つ一つがガラスロッドから切り出し、削り、焼成し、磨く、という一連の手仕事の積み重ねから生まれたもので、それを何十回と繰り返すことでピアス1葉分のガラス片が揃う。soloがそうであったようにorganも一つ一つのガラス片すべての円周部分に浅い溝を刻み付け、その溝に糸をかけて編み上げているが、側面から見ないとこれが編まれたものだとは気付かないかもしれない。ガラス片そのものの外形と溝の形状・深さを調整することで屈折が生まれ、正面から見ると溝や糸は視覚的に消失する。

接着や溶着ではなく、粒同士が溶けあわず点と点で接している感じが新鮮で、自分たちで見ても少し不思議な感じがする仕上りになった。みっしりとしていてsoloのように柔軟性があるわけではないが、編んでいる糸そのものが弾性のある支持体として働き、衝撃にも一定の強さがある。ピアスポストは一ヶ所に固定していないのでガラスとガラスの隙間であれば原理的にはどこでも付けられる。実際の着用には選択できる隙間は限られるものの身体との重なりを変えたり重心を変えて斜めに着けたりできるデザインもある。

こうして膜状に編み込まれたガラスは、純化され拡大された身体組織の一部のようにも見え始める。普段は強く意識はしないかもしれないが、実際に身体はこのガラスの集まりのように隙間だらけだし、光にかざし見れば分かるように透明だったりもする。このジュエリーはそんな<身体-空間><不透明-透明>の境界をもっと曖昧にして、個をより開かれたものにする新たな器官になろうとしているのかもしれない。

organ(オーガン)は”器官”を意味する言葉で、目鼻口や手足、心臓などがそれにあたる。少し意外なところでは、身体を覆いジュエリーと直接の接点となる肌 – 皮膚 – も人間が持つ最大の器官といわれている。ちなみにorganという言葉はorganizationの語幹でもあるように“組織”のことも指すし、楽器の”オルガン”のことも指す。個を構成する一要素を意味しながらそれ自体が個の集合としてのニュアンスも持つスケールに縛られない感覚はbubunの理念とも相似的だし、その音楽的な響きも素敵だなと思いシリーズの名前とした。

身体に新しい器官を追加する[organ]。

自分たちにとってシリーズはそう毎年増えていくものではないと思っていたのだけれど、作るにつれ考えるにつれ既存のものの派生としては収まりがつかなくなってしまった。

New Jewelry 2017 での発表となる。再びこの展示会で新作を発表できるのがとても嬉しい。

展示会の詳細などはinstagramでも告知していくのでそちらもご参照いただきたい。